Blenderを使ってCGで雲を作ってみる その5

皆さんこんにちは。武田です。
雨や曇りの日が続く時期になってしまいました。
ちょっとした晴れ間に、電線の合間に千切れ雲が浮かんでいる様子です。

さすが現実の雲はパターンが細かいですね!

前回までの一連の流れで、
モクモクした雲をうまく表現するためには多重散乱(計算が重ーい!)が重要だということがわかって、
それを描画する方法も見えてきました。

ただ、そもそももっと重要な点があって、「いい感じの雲の形」はどうやって作ればいいのでしょう?
もちろん、スカルプトなどを駆使して、ガッシガッシと雲の造詣ができれば、自由自在で一番良いのかもしれませんが、なかなかそうはいかないので、煙シミュレーションを使って雲の形を作ることを目指してみます。

とはいっても、いつもの煙がもくもくと立ち上がるシミュレーションでうまいこと雲の形を作るのは難しそうです。
シミュレーションのセットアップを簡単に行ってくれる、Quick Smoke で普通の煙を作っても、もくもくと上に立ち上がるだけです。
というかいきなり煙がドーンと発生するので、キノコ雲が上に伸びていくだけで、雲とはちょっと違う感じです。

さて、どのようにしたら雲が作れるのか…
いろいろとシミュレーションのセッティングを試して、どのようになるか実験してみました。

モクモクした雲の代表の積乱雲は、夏に地面が暖められて地表付近が暖かくなり、
上空に冷たい空気が流れ込んでいたりするとよく発達します。
暖かい空気の上に冷たい空気があるので、不安定が起こって対流が発生して、上昇気流で雲が発生するので、
まずは対流が作れれば、雲のパターンを作りやすいかもしれません。

ということで、シミュレーションの箱の上に冷たい空気(煙)を発生する板を
箱の下に暖かい空気(煙)の発生する板を置いて、かなり無理矢理ですが対流をさせてみます。
一様なスタート条件だと不自然なので、煙の発生源や流れに少しランダム性を与えてみました。
煙に色を付けて、空気の流れを見てみましょう。
(長い時間のシミュレーションにしたいので、シミューションの設定を10倍速にしています)

暖かい空気と冷たい空気で対流…?

浮力の程度や、箱の大きさをいろいろと調整した結果、上昇流や下降流が箱の中で発生しているように見えます。
ここで、この赤や青の煙は邪魔ですので、煙の密度0に設定して、
代わりに箱の中央部分に本命の雲を表す煙を発生させてみます。

発生源が真四角だとやっぱり変なので、頂点ウェイトを使って自然に見える発生源にしてみました。
ここから煙が発生して、対流に流されていくはずです。

煙が対流に乗って流されていきました。が、箱の中で火事が起きて煙が充満しているみたいになってしまいました。
発生した雲がいつまでも残ったら(しかも発生源では雲が発生し続けていたら)それはこうなりますね…
そこで、発生した雲はしばらくしたら蒸発して消えるように設定しました。

乱流に乱された雲、という感じはだいぶ出てきましたが…
上昇気流と下降気流が基本なので、上と下にばかり流されている感じですね。
もっと頑張れば調整はできるかもしれないのですが、この方法にはちょっと無理があったのかもしれない…
と思ったのですが、実はblenderの煙シミュレーションには、面白い機能があります。

低解像度のシミュレーションを解析して、高解像度のシミュレーションではこのような乱流パターンがあるはずだと予想して、高解像度の煙パターンを(真面目に高解像度で計算するよりも高速に)作り出すというものです。
その機能を使って、デティールを足してみると…

灰色一色で見づらいですが、上下だけではなくて横にも雲が流されてくれました

なんだか上下成分が強くて不自然だった形状が、横方向成分が増えて、少し自然な形状になったようです。
これをレンダリングしてみると…

ちょっと崩れかけた雲の雰囲気が出ています!
偶然ですが、少し無理があったシミュレーションから、良い感じの形をとることができました。

別の雲を3つ並べてみました。同じサイズの雲が3つはちょっと不自然ですかね。大小いり交ぜて、自然なレイアウトをとる必要はありそうですね。

本当はモクモクした雲が欲しかったのですが、いろいろと試しているうちに千切れ雲の形状になりました。
風の流れに流されている煙が元なので、仕方のない面はあります。

しかし、それでは実際の積雲は、なんでモクモクした形状になっているのでしょう?
実は、水蒸気が水滴になって雲が発生するときには、潜熱が解放されて熱が発生します。
良く知られている、水が蒸発するときに周りの熱を奪って冷たくなる現象の逆の現象です。
(漫画の世界でも、気化冷凍法で対戦相手を氷結させる、有名な敵キャラがいましたね)

この潜熱の解放のため、雲が発生するとますます上昇気流が強くなり、どんどんと雲の背が高く成長していくのが、入道雲や積乱雲です。
しかし、そうした現象を煙用のシミュレーションで再現はできるのでしょうか?
熱を発生する現象…

ん?
熱を発生させるといえば、そういえば煙を吐くだけではなくて、爆発のシミュレーション用に、
燃料を燃やすパラメーターがあったような…

と、なんだか派手な期待が高まったところで、次に続きます!

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